すべてはあの花のために②

もうじわげねえ


 襲われた翌日。葵は学校に入ると、生徒のみんなにぎょっとした目で見られていた。
 それはそうだろう。髪がばっさり短くなっているだけでなく、左頬は湿布が貼られ、左腕は吊っていたのだから。


「(ああー……今日学校行きたくないよおー……)」


 絶対リンチに遭う。わかっていた。


「(絶対そうだって! チカくんにバレちゃったんだもん!)」

((最初から言わないアンタが悪い))

「(あ! なんか久し振りだね!)」

((…………))

「(まさかの無視!)」

((アンタ、無理しすぎ、怒ってる。少なくとも、ツンデレ猫にはバレた))

「(あー……やっぱり?)」

((それ自体はミンナに言ってないかもしれない。でも、絶対聞いてくる))

「(気のせいだって言っとく!)」

((それも一つの手))

「(なんかカタコトだね?)」

((…………))

「(そっか。わかった。うん。無理しないよう頑張るからね)」

((ヨロシク))


 そんなやりとりをしていると、いつの間にか教室前に到着。姿勢を正し、Sクラスへ堂々と足を踏み入れようとしたところで、痛めていない方の手を誰かに引っ張られた。


「何やってんの! アンタはこっち!」

「つ、ツバサくんっ?!」


 そしてどんどんとクラスから遠ざかっていく。


「ツバサくん授業ー!」

「そんな状態で受けるなんて馬鹿じゃないの! それにアタシたちは、アンタに話して欲しいことがいっぱいあるのよ!」

「わあー……。やっぱりリンチに遭うんだあー……」

「何言ってんの! 勝手に登校してきて、しかも授業受けようだなんて! しかも一人で登校するとかバッカじゃないの!?」

「こ、言葉の暴力反対!」


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