すべてはあの花のために②

side……?


 生徒会室にてみんなが交代で葵の監視中。今はもう左腕を吊ってはいないが、まだ湿布は痛々しくその頬に貼られていて、チカゼはというと、今はもう急激な回復力でほぼ傷は目立っていない。

 一限ごとに、みんなが替わって葵の監視と遊び相手になってくれた、それはある日の放課後の話。



<チカゼの場合>


「おおー! 今の見たか!」

「見た見た! すごいね! んーできるかな?」

「いや、お前まだ治ってねえじゃん」

「何言ってんのー。もうやれるぐらいは回復したよ!」

「でも、まだ痛そうだしよ……」

「心配してくれてるの?」

「するに決まってんだろ」

「い、いつものツンじゃない……」

「え? ショック受けるほど? ……ツンの方がいい?」

「だってチカくんは、ツンデレ猫さんなんだもん……っ」

「いやいや、意味わかんねえし」

「ウサギさんとセットだと尚良し!」

「……だったらさ、甘えんぼ猫は?」

「え」


 そう言ってチカゼは、葵の右肩にこてんと自分の頭を置く。


「ツンじゃないと……ダメ?」

「(うっ……!)」


 上目遣いで攻撃された葵は、鼻をしっかりと押さえた。


「どっ、どうしたんだチカくん」

「別に? どうもしない」


 そう言って今度は葵の右手で遊びだした。


「……お前の手、綺麗だな」

「き、……綺麗じゃ、ないよ」


 そう言って指を絡ませてくる。


「……チカくん、もしかしなくとも眠たい?」

「ん? そんなことないよ」

「そんな話し方しないじゃん」

「そうでもないよ」

「……じゃあ、さっきの続き、していい?」

「……? ……どーぞ」


 そう言って、実は半分寝ぼけているチカゼは両手を広げ、葵を迎え入れる。


「え? ほんとに? やるよ?」

「いいよ。オレも……お前なら」


 ダメだ、完全に寝惚けてる。監視の仕事はいいのか?


「……わかった。それじゃあ遠慮なく」

「ん」


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