すべてはあの花のために②
十二章 記憶

最強且つ最凶のチームが出来上がってしまった


 翌日は雲一つない晴天。海水浴日和だ。
 プライベートビーチと言っても一般にも開放しているようで、海辺にはすでにたくさんの人で溢れていた。海面に光る太陽のように、みんな目をキラキラと輝かせながら海辺へと走って行く。


「葵ちゃん。水着見せて」


 ちなみに出遅れた葵は、魔王様に捕まっていた。


「そんなじろじろ見られたら脱ぎづらいんですが」

「えっ。水着脱ぐの?」

「バカなんじゃないですかパーカーに決まってるじゃないですか!」

「そこまで言わなくてもいいじゃん。好きな子の水着姿ぐらい、普通に見たいに決まってる」

「……?!」


 そんなやりとりをしていると、眠そうなアキラを連れてツバサがやってきた。


「……杜真って、こんなに変態だったかしら」

「俺もそう思う」

「アタシの記憶では、普通の爽やかイケメンだった気がするんだけど」

「俺の記憶では、お前はオカマじゃなかったよ」

「チッ」


 トーマの方が一枚上手だったよう。ツバサは心底悔しそうに舌を打っていた。


「アンタも早くパーカー脱いで見せてあげなさいよ。じゃないと、アンタに続く変態もずっとアンタのこと追い回すと思うわよ」

「おっと! それだけは勘弁して欲しいから、さっさと脱いでチカくんたちと一緒にビーチバレーでもしようと思うよ!」

「いやいや。取り敢えず変態に突っ込もうよ葵ちゃん」


 しかしそんな突っ込みよりも早くビーチバレーがしたくて仕方がなかったのか、葵はさっさとパーカーを脱いで、みんなの元へと駆けていった。


「へえ緑か。意外だな」

「俺もそう思う」

「アキさっきからそれしか言ってないけど、こんな炎天下の中で寝ないでよ」

「でもすごい似合ってる。葵ちゃんはセンスがいいね」

「俺もそう思う」

「いやだから……って、あらそう? お褒めの言葉ありがとう」

「別に翼を褒めてはいないんだけど」

「俺もそう思う」

「いや、もう突っ込まないけど、あの水着アタシが選んだの。自分が選んだのを着てくれるなんて、まるで恋人みたいじゃない?」

「今すぐ脱がす」

「俺もそう思う」

「じゃああの子より先に警察にお世話になるのね?」

「「……くっ」」


 葵が警察に行くのは、どうやら確定のようだ。


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