すべてはあの花のために②

sideカナデ


 理事長室の隣の部屋。


「かなチャン。今日もずっとここにいたの?」


 文化祭の作品なんか、とっくの昔に出来ている。


「……いたら悪い?」

「なんでそんなに避けるの?」


 送り迎えもしない、生徒会室にも行かない。
 彼女と会うのは、文化祭の出し物の練習をする時ぐらい。


「別にー? 何言ってんの~? アカ」

「あ。あおいチャン」

「――?!」


 ダッシュでソファーの後ろに隠れる。


「……いないじゃん」

「何そんなにビクついてんの?」

「別に? そ、そんなこと、ないし」

「そうだよね。本当はあおいチャンには会いたくてしょうがないもんねえ?」

「…………」


 静かにソファーに戻って、大きなハートのクッションを抱え込んだ。


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