すべてはあの花のために②
顔落としてくる
カナデに悲鳴を上げられるのも無理はない。何故ならば、葵の顔がそれはもう途轍もないことになっていたからだ。
眉毛は某アニメのように太く繋がっており、目は閉じた状態のまぶたにばっちり垂れ目になるような目が書かれてるし、ほっぺたはお多福面のように頬の高いところだけ異常にチークが塗られ、鼻はドジョウすくいでもしようと思ったのか、5円玉が括り付けられて、“これでもかー!”と言うほど真っ赤に裂ける口紅が引かれ、その周りには立派な青ひげがグルッと一周。もちろん、頬に貼られている湿布にも、チークと口紅と青ひげはばっちり書かれている。
「こっ。こわいぃいぃ……」
本気でビビってしまったカナデは葵を突き飛ばし、窓際のカーテンに逃げ込んだ。
「えっと。あおいチャン……?」
「あ! アカネくん! ついててくれてたんだね!」
「いやうん。まあそうだけどお……どうしたの。それ」
「やっぱりこの顔おかしいよね?! わたしも、もっとするなら面白くしてっていったのに、ツバサくんが『これなら大丈夫よ』って言うもんだからさー!」
「え? つばさクン?」
「わたしは笑わせられる顔にしてくれって言ったのに! これならわたしもビビってしまうわ! だからわたしは今とっても悔しいんだっ。ツバサくんに任せたのが間違いだった!」
そんなことを話していると、ツバサも遅れて部屋に到着。
「何言ってんのよ。読者にはこれぐらいがちょうどいいのよ」
「ツバサくん?! 見えないからってここまで酷くすることなくない!?」
「つばさクン。おれもそう思う。……かなチャンを見てみなよ。笑うどころかもっと距離空いたから」
アカネの声に、みんなの視線がカナデに集中。
「アオイちゃんはこっち見ないで!」
「ね? 言った通りでしょお」
まあ確かに。
あんな至近距離で見たらビビるか。