すべてはあの花のために②

それじゃあみなさん、さようならららら~


「ど、どういうこと?」

「少しでも会っちゃったら。話しちゃったら。離れてる分、衝動が激しくて……」


 ……わけがわからん。


「じゃあずっと会ってたらいいじゃん」

「だーかーらー! それができないの! 学校だったら大丈夫かもしれないけど、行き帰り一緒じゃないでしょ! その分教室とか生徒会室で二人っきりになってみなよ! 俺は襲う自信があるよ?!」


 そんな自信は、今すぐゴミ箱にでも捨てて欲しいが。


「カナデくん。一つ言いたいんだけど」

「なにっ?!」


 若干もう壊れてるけど。


「今までだって、カナデくんと毎日帰ってたわけじゃないし」

「……へ?」

「どちらかというと、アキラくんとかツバサくんとかと帰ることの方が多かったし」

「……あ」

「と言うわけだから、今まで通りでいいと思うんだけど?」

「……お」

「帰りは……そうだね。しょうがないかもしれないけどさ? 学校では今まで通り、普通にわたしと会って話してよ! そうしたら我慢しなくてもいいでしょう? 我慢よくわかんないけど」


 にっこりそう言ってあげると、カナデはしばらく目を見開いていた。
 そして突然、抱きついてきた。


「カナデくん?!」

「アオイちゃー……ん」

「はいはいどうしたー?」

「じゃあ、学校だったら毎日会うー」

「はいはいー」

「毎日話すー」

「はいはいー」

「毎日ぎゅーってするー」

「……え。ぎゅー?」

「毎日ちゅーする」

「それはさせません」

「ふはっ」


 カナデは離れてにっこり笑った。


「あんまりね、外ではアオイちゃんに近づけないんだ」

「そもそもそこまで近づいた覚えはないよ」

「ははっ。そうだねー」

「……なんだか楽しそうだね?」

「うんっ。なんかスッキリした!」

「それはよかった」

「でも、今日も一緒には帰られないから。今までの分も合わせて充電させて?」


 了承する前に、彼は葵を抱き締めてきた。
 その間、彼はずっと「……ありがとう。アオイちゃん」と小さく、本当に微かな声で呟いていた。


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