すべてはあの花のために②

逆にプレッシャーだぜい


 11月上旬。チカゼと葵の怪我も無事に治り、あれ以来襲われることなく、生徒会メンバーは文化祭の準備に明け暮れた。

 そしてとうとう、翌日に文化祭を控える。


「あっちゃん、そっちの方は順調?」

「うん! 順調だよ!」

「そっかあ。……とうとう明日だね!」

「うん。そうだね。とうとう来ちゃったね」

「大丈夫! あっちゃん怪我してたのに、みんなと普通に練習してたのかと思うくらい完璧だったから」

「そう言ってもらえるのは嬉しいけど、逆にプレッシャーだぜい」

「ふふ。……でも、楽しい文化祭になるといいね!」

「うん。何事もないのが一番だ」

「そうだね。……でもさ、最近全然怖いことなかったよね?」

「でも油断大敵って言うじゃない?」

「わかってはいるんだけど……文化祭、最後の後夜祭まで気が抜けないかもしれないね」

「でも、後夜祭って生徒だけでしょ?」

「それまでにいろんな人が入ってくるじゃない? そうなると、本当に最後まで気をつけておかないと」

「うん。……キサちゃん、気をつけてね」

「あっちゃんもね!」

「うんっ。……それじゃあ、今日はみんなで帰ろうか!」

「うんそうしよう! みんな呼んでくるねー!」

「……うんっ」


 キサはみんなを呼びに教室へと駆けていった。



「……明日、か……」


 葵の小さな呟きは、さっと空気に溶けて……――消えた。


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