すべてはあの花のために②
どうしてそれが一番なの……
勝利した天使チームはというと、悪魔チームのみんなにそれぞれ好きなものを奢ってもらった。そして、いよいよあの例の洞窟へ――。
「お、おい。なんでオレらまで、行かなきゃ行けないんだよっ!」
「え? だって、ちゃんと取ってくるかどうか見とかないと」
何故か洞窟の入り口に大集合。敗者チームが無事に中に入っていくのを確認した後、葵たちは洞窟の入り口でみんなが戻ってくるのを待っていた。
「……今日も眠い?」
しばらく見届けた葵は、さっきの戦利品を使ってオウリとチカゼに洞窟の方は任せることに。少し二人と距離をとってから、アキラにそっと話しかける。
けれど彼からの返事はなく、またぼうっとしているだけ。まるで聞こえていないようだった。
「(……取り敢えず、寝ちゃってもいいようにしといてあげとかないと)」
彼の背を、岩に預けるようにしておく。
でも彼は立ったまま、呆然としているだけ。葵が隣にいることにも気づいていないようだった。
「(これじゃあまるで、アキラくんが消えちゃうんじゃなくて、アキラくんの中からみんなが消えちゃうみたいな……)」
葵は流石にアキラを起こそうとした。
「アキラくん。起きてわたしと少し話をしない?」
反応が返ってこなかったから、やっぱりダメかもしれないと思った。
けれど、ゆっくりと目が合う。
「……うん。いいよ『 』」
静かな微笑みとともに、彼はそう囁いた。
「……アキラくん」
「何だ?」
「ちゃんと見て?」
「? ちゃんと見てる」
「見えてないよ。わたしじゃない人見てるでしょ?」
「……何を言っているんだ」
訝しむ彼に、苦笑を漏らしながら葵は尋ねた。「じゃあ、わたしの名前を呼んでみてくれる?」と。