すべてはあの花のために②

だったらいいですさようなら


「あっちゃん。どうしてあんなに二人して砂だらけだったの……?」


 何かあったのではと心配してくれたのだろう。ただ、「うーんと。一番正しい表現は、技の掛け合いをしていたからかな?」と答えると「技?!」ってキサは驚いていた。間違ってはいないからそれ以上はにっこり笑っておいたけど。


「わたし、こんな感じでご飯食べるの初めて!」


 時間もいい頃合いになり、みんなでバーベキュー開始。自由に好きなものを焼く人もいれば、鍋奉行のように網や鉄板の前で、それ食えやれ食えと、みんなにお肉を焼いてくれている人もいる。


「理事長とかお父さんたちのおかげもあって、あたしたちは小さい頃から結構こういうことしてたんだ」

「いいね! すっごく楽しそうっ!」

「あたしたちと一緒にいたらいつでもこんなことしてるから、あっちゃんもきっとこれからもっと楽しいよ!」

「……うんっ。嬉しい! これからがもっと楽しみだよっ」


 タマネギを頬張ると、思った以上に生焼けで、辛さに涙が出てくる。
 そんな葵に慌てて飲み物を注いでくれたキサは、葵の涙が落ち着いたのを確認して、心配そうな顔で尋ねた。


「秋蘭、どうだった?」

「……うん。みんなに心配かけてごめんねって」

「心配……するに決まってるんだからさ、少しくらい言ってくれたらいいのに」


 まったくもうと、少しだけ呆れた様子のキサに葵は「多分だけど」と前置きして続けた。


「ちょっとね、意味が違うんだと思う」

「ん? どういうこと?」

「アキラくんは、みんなに心配掛けまいとしてあんなことを言ったんだけど、見ていては欲しいんだよ。アキラくんがみんなに言いたかったのは、本当は『側にいてくれるだけで十分』って意味なんだと思う」

「……ふっ。何それ。日本語下手くそ過ぎ」

「ほんとにね。だからキサちゃん、これからもアキラくんの側にいてあげてね」

「うんっ。絶対離れないよ。秋蘭はあたしたちの大事な友達だから」


 そうして二人は頷き合って、バーベキューを心行くまで楽しんだ。


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