すべてはあの花のために②

ど、どこまでご存じですかっ?


 そして、翌日。前日の夜にトーマから連絡があったので、葵はその待ち合わせ場所のところまで来ていた。


「……いや、これどう見たって……」


 彼女の目の前には、豪邸が佇んでいた。そして、その表札には【皇】の文字。


「どう見たってアキラくんちじゃん……」


 そりゃアキラくんなら知ってるし? 何なら本人だし? だからって普通ストレートに聞きに行く?


「しかもわたし、もうアキラくんには聞かないって本人に言っちゃったし。……トーマさんは一体何考えて」

「秋蘭じゃないよ?」

「わあ?!」


 急に独り言に混ざってこないでくださいよ!


「ていうか、違うんですか?」

「それだったらもう葵ちゃんは聞けること聞いてるでしょ? だから、詳しくて何とか教えてくれそうな人のとこに行こうと思って」


 相手も忙しい人だから、あんまり時間は取れないかもしれないけど……そう言いながら、彼は躊躇うことなくインターホンを押した。


『はい。どちら様でしょうか』

「11時に(かえで)さんとお会いする約束をしてます、桐生と申します」

『少々お待ちくださいませ』


 一度確認のため通話が切れる。


「……どういった方なんですか?」

「会えばすぐわかるよ」

『お待たせしました。門を開けますので、そのまま離れ家の方へお進みください』

「ありがとうございます。……それじゃ行こうか、葵ちゃん」


 葵は状況を理解できないまま、皇の敷地に足を踏み入れたのだった。


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