すべてはあの花のために②
ダメだこりゃ
でも、いきなりクラッカーを鳴らされた二人はというと、ビックリしたまま呆然としていた。
「……あれ? 失敗したかな……」
「いやシント、どうしてそれにしようと思ったかな」
「え? だって久し振りに会えたんだよ? こんな目出度いことにはクラッカー必要じゃん?」
「あー……そうだね。うん。必要だーそれは」
目が点になっている二人をなんとか車に押し込んで、後部座席に四人乗り込む。リムジンと言えるほど大きくはないが、コの字型になっていたから、向かい合わせに座れるくらいには十分広い。
「いやー! 本当久し振りすぎて! 何話せばいいかなっ? ねえ葵!」
「シント。キャラ崩壊してるから。ちょっと落ち着いて」
「だってだって! 俺の大好きな二人と会えるなんて思わなかったからさあ!」
「いやいや、会うの怖がってたのはどこのどいつだよ」
「? ドイツ?」
「ダメだこりゃ」
そんなコントをしていたら、ようやく二人は正気に戻ったよう。
「し、んと……?」
「しん、にい?」
その声が聞こえたのか、シントは見たこともないほど嬉しそうに破顔した。
「そうだよアキ! 大きくなったな~! 楓! 老けたなあ!」
後半大分失礼なことを言っていたが、彼もそれが気にならないくらいには、シントと再会できたことで頭がいっぱいらしい。
「シント……ッ、お前! 今までどこに行ってたんだよ! 俺がどんだけ心配したと思って!」
「あーそれね。まあそれは追々……」
「しん、にい……」
「ん? なあにアキ」
「しんにい」
「うん」
「っ、シン兄っ!」
「うん! アキ!」
久々の兄弟の再会。いつも大人びているアキラが、シントにしがみついて何度もその存在を確かめるように名前を呼ぶ。その姿を見て、カエデも本当に嬉しそうに微笑んでいるが、その目は少し涙で揺れていた。