すべてはあの花のために②

え? わたしの中でもだよ?


「……わかった」

「よし偉い偉い。……それで? いつになったら入ってくるんですかねー?」


 シントの視線の先には、先程コンビニまで行っていた二人が、仲良く扉の前で待っていた。


「兄弟の感動の再会を邪魔しちゃ悪いと思って。ね? カエデさん」

「そうだぞお前ら。若干禁断っぽくなってたから気をつけろ」

「「それはない」」


 息ぴったりの兄弟のところへ葵は歩み寄り、「アキラくん大丈夫? 頭痛かったでしょ?」と、買ってきた氷嚢をアキラの頭に当てる。


「葵」

「ん? 何?」

「止めてくれて、ありがとう」

「……いいえ? どういたしまして!」

「あと、こっち来て」

「え――?」


 そう言うが早いか、アキラは葵の腕を引っ張り、自分の足の上に乗せ始める。


「えっと、あきら、くん……?」

「褒める」

「ほへ?」

「止めることができたら褒めてって言ってたから」


 アキラはよしよしと言いながら、葵の頭を撫で続ける。


「い、いつまでこうするの? 恥ずかしいんですけど……」

「まだダメ」


 満足するまでそうするつもりか、葵は致し方なく腹を決めてしばらく撫でられることに。
 けれど、近い距離にあるのは整った顔に、吸い込まれてしまいそうな灰色。目が合うと羞恥で頬が熱くなり、慌てて視線を逸らす。

 そんな様子に満足そうに笑みを浮かべながら、彼はやさしい手で何度も頭を撫でてくれた。それから次第に、撫でていた手がだんだんと後頭部に移っていき、葵の頭を引き寄せてようとしていたところで。


「ストーップ!」

「「――!!」」


 我慢ならなかったシントが、それを阻止しました。


「ねえアキ? 今、何しようとしたのかなあ?」

「? 言ってもいいならキ――」

「言わんでいい!」

「聞いて来たのシン兄の方なのに」

「葵も! なんでそんなに無防備なの! 信じらんないんだけど!」

「葵も、了承もなしにした人に言われたくないと思う」

「うぐっ……」

「やっぱりイチャついとったんかいお前ら」

「なっ、何さ! そもそも遅れてきたにも関わらず、携帯さんに失礼なことしたお前らが悪いんだろっ!?」

「馬鹿か。携帯さんに失礼なことしたのはお前らだろうが」


 どうやらカエデが言うには、遅れることも、遅れて着いたことも、きちんと連絡を入れていたらしい。


「それを無視してイチャイチャしてたのはどこのどいつだっけ?」

「……っ、あ〜お〜い〜?」

「……電源切れてました」

「バカー! お前のせいで俺のこいつらの評価が下がったじゃん!」

「え? わたしの中でもだよ?」

「なんでえ!? 俺の一世一代の告白を何だと思ってるの?!」

「おいおい、告白してたのかよ」

「シン兄最低」

「俺の評価がどんどん下がっていくー……」


 がっくり落ち込んでいるシントは、ひとまず放っておくことにした。


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