すべてはあの花のために②
十四章 前準備
着るだけなら全然いいけど
その後、アキラからきちんと報告を聞いた皆は、わだかまりが無くなったように少しスッキリしたような面持ちになっていた。彼を止められたことは、葵にとっても大きな一歩だった。
「(彼がいれば、もし最悪の事態になったとしても――)」
そんなことを考えながら、葵は生徒会室に来ていた。今日は久し振りに朝から会議。体育祭に文化祭、そして2年生は修学旅行と、これから行事が続くのだ。
「(楽しみ! 体育祭は本気になれないけど)」
((そうね。アンタが本気になったらきっと、学校中が大騒ぎ――))
「いやだーっ! おれは絶対譲らないからーっ!!」
「(な、何事?!)」
珍しいこともあるもんだ。彼がこんなにも声を張り上げているなんて。
「どっ、どうしたの?!」
「あ。あっちゃんおはよー……」
「あれ? どうしてそんな皆ゲッソリしてるの?」
葵が着いた時にはもう皆すでに揃っていたが、まだ会議が始まってもないのに疲れ果てている様子。彼を除いては。
「あおいチャンも、おれの意見に賛成してくれるよねえ?」
「ん? アカネくんの意見って?」
「あおいチャンはあ、『うん』って言ってくれるだけでいいんだよお」
「(え。いつもとキャラ違いますけど……)」
首を傾げている葵に、異様なオーラを纏ったアカネが楽しそうに微笑む。
「体育祭の種目にね、仮装行列を加えたらいいと思うんだあ」
「……仮装行列?」
「ちょっ、アンタ食いついちゃ――」
「そうなんだよ! みんなで仮装してさ? グラウンド一周してー、それで一番評価が高かったクラスに豪華ぷれぜんとおー! みたいな?」
「いい案じゃない? 何でみんなそんな嫌そうなの?」
しかし、みんなは何故か疲れ果てたようにぐったりしている。
そういえば、各学年一つずつプログラムを自由に組める箇所があったはず。得点自体には関係ないが、たとえばフォークダンスなどが選ばれてたはずだ。
「(……そういえば、これにもジンクスあったんだっけ)」
それは、ひとまず置いておくことにして。