すべてはあの花のために②

バナナはお菓子に入らない


 本日から、熱海へ二泊三日のお泊まり旅行。


「お嬢様。お忘れ物などはありませんか?」

「はいシント。きちんと準備してから毎日しおりを見ながら確認したので大丈夫です」

「いつから準備していたのですか」

「終業式の日です」

「そ、そうですか(早えよ)……それでは、楽しんでいってらっしゃいませ」

「はい。また連絡します」

「はい。失礼のないよう、お願いします」

「(携帯さんにね)わかりました。それでは行ってきます」


 待ち合わせは、9時に最寄り駅。葵はキャリーバッグをゴロゴロと転がして、待ち合わせの駅へと歩いて行った。


「(流石に心配だったから、四国の時と同様タイムスケジュールはコピーでもらったけど……)」


 場所は熱海。しおりには、大々的に〈遊ぶ!〉ぐらいしか書かれていない。
 それを、シントは大事に胸ポケットにしまう。


「(……海、ね……)」


 何事もなければいいけれどと、そう心で呟いたシントは、静かに屋敷の中へと戻っていった。


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