すべてはあの花のために③
挿話 不思議な絵本
それは昔々の物語
むかしむかし
あるところに
とってもきれいなお花が
咲いていました
その花は
たくさんの花から
キレイだね
良い香りだねと
たくさんほめられて咲いていました
そんな花は
とってもいい気分になりました
そうでしょ?
わたしはとってもきれい
とってもいい香りなの
そうしているうちに
自分の仲間が枯れてしまいそうでした
花たちは
そのお花にお願いをします
ねえ
どうかあなたの花の蜜を
分けてあげてくれないかしら
その花は首を横に振ります
蜜をあげてしまうと
花が少しずつ枯れてしまうからです
だってわたしはキレイでいたいもの
花は仲間がどんどん枯れていっても
決して蜜はあげません
そんな花に
神さまが怒りました
神さまはその花をずっと咲かせ続けたのです
ひとりぼっちになっても
花はずっと狂ったように咲き続けます
そこで花は気づきました
ああ
わたしが蜜をあげていれば
みんなはもっときれいに花を
咲かせていたのねと
やっと気づいた花は神さまに
枯らせてもらいました
ありがとう
神さま
これでやっと
みんなのところへ
いけますね
そうして花は
黒くなり
汚くなり
小さくなり
最後は冷たくなって
笑顔で枯れていったのでした
めでたし
めでたし
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