すべてはあの花のために③
大好きな人たちと、最高の思い出を一緒に作りたい
それから葵は制服に着替え、コンテストに参加したみんなと見回りをしてくれたチカゼと一緒に講堂へ向かって歩いていた。しかし、空気は途轍もなく重苦しく、一言でも言葉を発してしまえば即殺されてしまいそうな雰囲気だった。
「(ま、自業自得か。みんな優勝したかったんだもんね)」
葵は自分の頭に光っているティアラを見上げ、ため息をつく。
「(一体何だったんだろう昨日の男は。『ミスコンに出ること』が条件だったのに、実際のところ何もなくて拍子抜けだし)」
講堂に着くと、フィーリングカップルもつい先程終わったようで、みんなで片付けをしていた。
急いでバンドの準備しないとと、葵は幕が下ろされている壇上の上に上がって、アカネとオウリの手伝いをしようとした。
「「「はーい。ちょっと集合ー」」」
苛ついた声で招集をかけたのは、カナデとヒナタとツバサ。どういうわけか、アカネとオウリの表情も暗い。
「はい。アキくん、どうぞ」
ヒナタがそう言って、アキラにバトンタッチする。アキラは何もないのに、手にマイクを持っているかのように話し出す。
「残念ながら、俺らはとっても傷心中なので、バンドどころではないという相談です」
「ええ?!」
みんなに睨まれた葵は、蛇に睨まれた蛙のように動けなくなった。
((8対1だったら、そりゃ負けるワ))
「(そんなあ。わたし、楽しみにしてたのに)」
((それ、ちゃんと言ってあげたラ?))
「(……十分、幸せだから。一緒にいてくれるだけで)」
((……ヤッパリ、伝えてあげなよ))
「(でも……)」
((幸せ。分けてあげるんでショウ?))
「(……うん。そうだね)」
どうしてみんなが傷付いたような……つらい表情をしているのかはわからないし、どこまで伝えられるかわからないけれど。みんなにはちゃんと、伝えたい。