すべてはあの花のために③

……っ。しあわせに。っ、なり。たい――!


 バンドを終えた葵たちは、一年生組に後夜祭準備へ向かわせ、大急ぎで楽器の片付けをしていた。


「あっちゃ~ん。お客さ~ん」


 やる気がなさそうなキサの後ろからひょこっと現れたのは、先程の彼。彼が出てきた途端、みんなの雰囲気が悪くなる。
「わかりました」と立ち上がった葵は、続けて「すぐ戻ってくるね」とアキラに伝えて行こうとしたけど、何故かその手を握られてしまった。
「絶対にすぐ戻ってくるから」と、自分の手を重ねてするりと外すも、彼の表情は想像以上に苦しそうで。


「アキラくん。わたしはそんなに信用してもらえませんか?」


 返ってこない返事に、「それならわたしにもちょっと考えがあります」と、葵はステージ裏にアキラを連れて行き――――すぐに帰ってくる。一体何があったというのか、みんな不思議で堪らない。


「それじゃあ、ちょっと行ってくるから」


 葵は待たせている彼のところへ駆けていった。


「……ねえアキ。今何があったのよ」

「アオイちゃんと何したの」

「あきクン黙ってないで教えて」

「…………激しかった」

「「「何が……っ?!」」」

「いや、ただもみくちゃにされただけじゃない……?」


 鳥の巣みたいに爆発していたアキラの頭に、キサだけは気付いていたとか。


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