すべてはあの花のために③

おいでなすったあーッ!!


「じゃあ、わたしはそろそろ生徒会室に行っておくよ」


 流石にまだ到着するようなIQが高い人はいないと思うが、写真も見に行きたいし。
 葵がそう言うと三人は目を薄く開き、少し思案顔。そんなに心配しなくても、流石に殺されることはないと思うんだけど。


「オレはここの番しとかないといけねえから、お前ら生徒会室まで送れ」

「ええ?! いやいや、生徒会室とここってこの学校の真反対にあるんだよ? そんなことしてもらうのは申し訳ないよ」


 葵は両手を突き出して手を振って断るが、今度は睨まれてしまった。


「この期に及んで何言ってんの」

〈あーちゃんの無自覚〉

「そこまでバカだったとは。オレでもそこまでじゃねーよ」


 ヒナタとオウリに、「どっこいどっこい」と言われ、チカゼは半泣きで文句を言っていた。


「(いや、わかってるんだよ? わかってるんだけどさあ)」


 自分が選ぶ写真を見られたくないしなあ……と思っていたが、まあまだ時間はあるかと思い。


「じゃあ、お願いしてもいいかな? チカくんみたいにバカではないから」


 と言っておいたらチカゼが飛びかかってきそうになったけど、自分の着物の裾を踏んづけて顔面から転けていた。


「じゃあチカくんには餞別を渡しておこう」


 葵は、持ち歩いていた小さな箱をチカゼに一つあげる。


「は? なんだよ、これ」

「え? 知らない?」


 まさか、誰でも知ってるようなものを知らないとは……いや、最近の子は使ったことがないから知らなかったりするのかな。


「いや知ってるけど。お前のその恰好と合ってなくね?」

「失礼しちゃう!」

「てかあんたそれ、いろいろ混じってるでしょ」

「??」


 葵が持っていたのは、マッチが入っていた竹カゴ。


「マッチ売りの少女はそんな恰好してねえ」

「まあそうだろうね」

「意味わかんない」

「……??」


 葵の恰好は至って普通。灰色のノースリーブワンピースの中に白のブラウスを着て黒いタイツを履いているだけ。
 普通の恰好に対してそこだけが異様に目立っているものといえば、『大量のマッチが入った竹カゴ』と『ブルーとピンクに分けられたハートのガラスのネックレス』、そして『真っ赤なパンプス』くらいだろう。


「一つに絞れなくってさ? だから、全部にしてみたのさ!」

「いやいや、そんなどや顔で言われても」

「変人はほっとこ」

「変人て……ぐすん」


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