すべてはあの花のために③
し、失礼な。わたしだってちゃんと笑えますよ
業者に会場の片付けを手伝ってもらっていると「お嬢ちゃん」と、声をかけてもらった。責任者のヒエンだ。「ちょっとだけあとで時間くれ」と、要件だけ言って、彼はまた作業に戻っていく。
「(あなたが動いたということは、恐らく……)」
葵は一度ゆっくり目を閉じてから、また仕事に戻った。
「それではみなさん。ありがとうございました」
生徒会メンバーは、業者さんに礼の品を渡したあと、控え室に荷物を取りに。葵は話があるから先に戻っておいてもらうようお願いした。
初めは心配されたけれど、「何があっても守るから、ちょっと借りてく」とヒエンに言われ、その格好良さに思わず照れてしまった。
「こいつらが、あんたに謝りたいってよ」
「え?」
体育館裏へ連れてこられると、茂みから現れたのは以前ここで葵のことを襲った三人組。思わず葵は身構えたが、三人が葵を怖がっていたのと、どうしてかすでにボロボロの状態だったので、すぐ戦闘態勢は解いた。
「お嬢ちゃん、こいつらに一体何したんだよ」と聞かれ「回し蹴りを少々」と答えると、ヒエンは目ん玉が落ちそうなほど目を見開いた後、豪快に笑っていた。
「あっ、あんたに、俺ら。謝ろうと、思って……」
「「ごめんなさーい……」」
異様なほど震え上がりながら土下座する三人を見て、思わず拍子抜けした。
ヒエンの方を見ても首を捻るばかり。どうやら彼らが葵に謝りたいと言って聞かなかったから、こうして連れてきたのだそう。
「す、すみません。状況が全くと言っていいほど把握できてないので、説明を求めます。まずはヒエンさん」
「こいつらがついさっき会社まで来て、お嬢ちゃんにどうしても謝りたいって言って聞かなかったから、ボコったあと連れてきた」
あ。だからこんなにボロボロなんですね。了解です。
「それと、こいつらに縛られた三人もめちゃくちゃこいつらに怒ってたから、あいつらもボコってた。以上」
あの人たちも怒ってたからね。気は済んだかしら……。
「わ、わかりました。ありがとうございました。それで、あなたたちはどうしてわたしに謝ろうと思ってここまで来てくれたんですか?」
葵はしゃがんで彼らに視線を合わす。真剣に謝ってくれているから、もうあんなことはしないだろう。
「お、俺らはっ。更正しようと思ってだなっ?!」
「そ、そうだっ! だ、だからまずはっ、あんなにと思ってだなっ?!」
「謝って済む問題じゃねえって、ちゃんとわかってるんだけど。それでもあっ、謝らねえとって、そう、おもっ、思って、だなっ?!」
こんなにビクビクしている理由はわからなかったが、まあ今はよしとしよう。