すべてはあの花のために③
sideカナデ
どこまで聞いてるかわかんないから、初めからいくけど。
俺はここ、五十嵐組のみんなに育てられてきた。
親父はもちろんだけど、ここにいる奴らみんな大事な俺の家族だ。
母親はいないよ? いつの間にかいなくなったらしいんだけど、俺小さかったし。こんなに大勢家族がいるから、特に寂しいとは思わなかった。
親父は俺を大事に育ててくれたよ。本当に、毎日が幸せだった。
でも、組の人間ってだけで嫌われちゃいけないからっていうので、親父は俺は母方の名字で名乗るように言われた。別にいいのにって思ったけど、まあそれで親父が安心するならそれでもいいかなって。
だから俺の名字は東條なんだ。五十嵐ももちろん好きだけどね?
でもまあ親父は、俺の母親は五十嵐であることが怖くなって逃げたんじゃないかって言ってたから。それなら、隠しとこって思ったかもね。もう大分昔だからあんまりはっきりとは覚えてないけど。
それから小学生になって、みんなに出会ったよ。
みんなには知っておいて欲しいなって思って俺の本当の話をしたんだけど、そんなの関係なしに付き合ってくれる唯一の友達なんだー。
あ! みんなここ! 照れていいからね?
……え。なんでそんな白い目で見てくるの。
わ、わかったよ。続きね、続き。
それから、トーマくんは卒業と同時に徳島に行っちゃったでしょ?
その一年後に俺らも無事に小学校を卒業して、中学生になった!
そこで俺は、初恋をしたんだよ。
とっても可愛い子でね?
小さくって、大事にしてあげたいなって思ったんだ。
まあそれは向こうも同じみたいで、俺は人生最初の彼女をゲットしたわけよー。
本当に毎日惚気てたなー。その犠牲になるのは大抵マサキだったけど。