すべてはあの花のために③

耳かっぽじって、よ~く聞きなさいッ!!


 口を挟もうものなら、いつでも手を出してやろうって思ってたけど。


「(なーんだ。ちゃんと静かに聞けるじゃん。病み具合が酷かったからどうしてやろうかと思ってたけど)」


 五十嵐組全員を見渡すと、顎が外れそうなほど大きな口をあんぐり開いたまま、固まってしまっている。


「アオイちゃん。これが俺の過去全部だよー。やっと話せたねー」


 そう言って、葵に抱きついてきて、足の間に収めてくる。
 はいはいと思いながら、葵はカナデの頭をよしよしと撫でてやることにした。


「(……苦しい過去を親しい人に話すのは、とても苦しいことだ。それはきっと昔以上に)」


 それを乗り越えたカナデは、今ちゃんとこの一瞬で成長した。
 次は、止まったままの彼らの番。


「でもアオイちゃんは、マサキからこのこと聞いてるんじゃないの? それにここにいるみんな、このこと多分知ってるよ?」

「そうだね。きっとカナデくんのことを傍でちゃんと見ていたみんな(、、、)なら、全部は話してなくても何となく気づいてただろうね」


 そう言って葵が指差すのは生徒会メンバー。


「え? みんなには話してないよ? ちょっとだけなら話したけど」


「だから、大体知ってるのはあいつらだよ?」って、カナデは組のお馬鹿な奴らを指差すが、当然彼らはカナデから全力で目を逸らす。


「お、おう。どうやら全然家に帰ってこなかったばっかりに、相当嫌われたみたいです、どうぞ」

「いいえそれは違います。どうやら彼らは、カナデくんに謝らないといけないことがあるみたいです、どうぞ」


 そう言うと、カナデは疑問符付きで首を傾げる。
 ……なんだ、今日は。えらく可愛く見えるじゃないか。
 大きくないぞ! 小さいわんこだ今日は!

 まあ、そんなことを言った葵の言葉が聞こえたのか、生徒会メンバーが大きく頷いている。

 ……そうか。やっぱり知ってたな、みんな。
 流石としか言いようがない。


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