すべてはあの花のために③

ドMだねえ


「それじゃあ圭撫、何でも聞いてくれていいよ~」


 キサが嬉しそうに資料を広げる。


「え? ……えーっと。よくわかんないんだけど、みんなは俺がわからなかったことを知ってるの?」


 カナデがそう言うと、みんなはこくりと頷く。
 そんな様子を見て、カナデは「う、嘘でしょ?」って頭を抱えて項垂れちゃったけど、ちらりと見える横顔はちょっと嬉しそうだ。


「そ、それじゃあ、彼女たちを襲った奴をやっつけてくれたのは……?」


 カナデがそう言うと、アキラとチカゼがピシッと手を上げる。


「……え」


 手を上げただけで返答がなかったんだけど、カナデはそれだけでわかったようで「え。まさか」と言っている。


「はいご名答。ボコボコにしてやったのはこの2名でーす」


 キサはメガネをクイッと上げながら正解を伝える。
 ヒナタとツバサは、やる気がなさそうに「わーすごーい」ってパチパチ手を叩いていた。


「い、今そいつらって……」

「先生のことがあって、みんな警察へ連行したよー」


「そ、そうなんだ」と、カナデはホッとしたように力を抜く。泣きそうになっているのか、彼から漏れる声は少し、涙声だ。


「え? カナデくんもういいの?」

「へ? だって、もう十分だよ。そもそも、こんなことしてくれてるなんて思わなかったんだから」


 カナデがそう言うと、もちろんみんなからは「えー!」と非難の声が。


「そうだよね? 何のためにみんな頑張ってきたと思ってんの。全部カナデくんとお馬鹿な組の人たちのためじゃん。 ……しょうがない。わたしが代わりに聞いてやろう!」


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