すべてはあの花のために③
――カチッ
只今、キサによる確認作業が行われております。
「ありゃま~。バッチリ見えてんね」
そう言ってしっかり隠してくれています。どうもありがとさんです。
「シントに見つかるともっと大変になるので、念入りにお願いします」
「ほいりょーかい」
キサは首も鎖骨も、もう場所を覚えたかのように念入りに消していってくれた。
「おじさんに協力してもらえばよかったのに」
「だって。もう勘違いさせるのは嫌だから……」
葵は、膝の上に作った握り拳をぎゅっと強く握る。
「でもおじさん、それぐらいしてもいいって多分思ってるよ? だってあっちゃんのこと、最初は殺すとか言ってたのに、結局家族の仲を取り戻すことができたんだし。それぐらいの勘違い大歓迎なんじゃない? それでまた圭撫と話できたら嬉しいと思うけど」
「……そ、そんなものなの?」
キサはぽんっと葵の肩を叩いた後、化粧道具を収め始めた。どうやらバッチリ隠せたようである。
「会話が弾むとかは言い過ぎかもしれないけど、おじさん圭撫と全然話せてなかったから、ちょっとしたことでも嬉しいと思うよ?」
「……会話の種になったと思えばいいのか」
「お! 切り替え早いね~! それじゃああたしが上手いことおじさんに言っておいてあげるから、あっちゃんは着替えてから大広間に集合ねー」
キサはシオンのところへ大急ぎで行ってくれた。
「そうだね。あそこの部屋に、わたしの荷物あるしね……」
時間差で来いと、そういうことであろう。