すべてはあの花のために③
邪魔しないでっ!
そのあと葵は制服に着替えて、大広間(※葵が男たちの屍を築いた部屋)に行った。
「え」
「は」
「おいおい。どうしたんだよ、これは」
ヒナタとチカゼも一緒にここまで来たんだけど、そこは今にも戦が始まりそうなほど、殺気立っていた。
「(キサちゃ~ん。余計に酷くなってない……?)」
どうやらカナデだけではなく、アキラ、ツバサ、アカネ、オウリも勘違いしているようだった。五人は、今にも飛びかかっていきそうなくらいの鋭い視線をシオンに向けている。
ニヤついているのは、事情を知っているキサとシオンのみ。組の人たちやマサキの頭にはハテナが浮かんでいた。
「……ねえ。どうしたのこれ」
「おい。何があったんだよ」
肘で横腹をチカゼが突いてくるが、葵はただただ平穏を願い、何も言わずに席について朝食を戴こうとした。……のだけど。
「あ。アオイちゃーん。さっきはどーもー」
「あ。いえ。……こちらこそ?」
葵の声に「どういうこと⁉︎」とみんなの視線が集中。「やっぱり変に拗れたじゃん!」とキサの方を向くけれど、彼女はほっぺたをぱんぱんにしながら朝ご飯を食べているだけだった。美味しそうに食べるねー。
そう思っていたら、また馬鹿野郎が爆弾を落とす。
「上手に消えた~?」
「――! シオンさん!」
そんなことを言ってくる彼に、葵はみんなより先に飛びかかる。
「これ以上言ったら、また勘違いで元通りになっちゃうでしょう⁉︎」
「えー? でも俺はアオイちゃんのためにい……」
「それは本っ当に嬉しいんですけど、傷口増えていってますから! カナデくんにしかバレてなかったのに、なんでみんな知ってるんですか⁉︎」
「それはキサちゃんの粋な計らいだよね~」
彼女は楽しそうに笑いながらピースしていた。
「楽しんでるじゃないですか完全に」
「うん。俺も乗っかっちゃったけど、彼女が一番楽しそうだった」
なんということだ。
いろんな意味で疲れた葵は、そのまま彼にもたれかかる。
「アオイちゃんから離れろー!」
勘違いしたカナデが引き剥がしにかかるが、「こうなりゃやけだ!」と、逆に葵は思いっきりシオンに抱きついた。