すべてはあの花のために③

慰めてあげる準備でもしておいた方が


「ありゃま。泣くほどわたしの技がすごかったんだろうか」


 扉を開け、去って行く彼の背中に手を振る葵。


「アカネくんも詰めが甘いよねー。大事な用事なら鍵は閉めるよー」


 そう言って、今度こそ鍵を閉める葵。
 そしてスマホを取り出してある番号に電話をかける。


「……あ。もしもしご無沙汰しています。……え? この間会ったばっかだって? ははっ。確かにそうですね。いやーだってこの巻、まだ4日しか経ってないから、日にち感覚がわからなくて。……ま、それは置いておいて。

 すみませんお忙しいでしょうに。ちょっとお話ししたいことがあるんです。急を要したので無理を承知で掛けたんですけど、出てくださってよかった。

 …………はい。お願いできますか? 今は学校です。どうもわたし方向音痴なもので、そちらまで行ける自信が全くなくて。このままだと日にちを跨いでしまうと思っていたものですから。

 それは構いません。わたしも少し今から用事があるので……あ、はい。迎えに来てくださる頃には、わたしの方も用事は済んでいると思います。裏門の方でいいですか? 何かありましたらまた連絡ください。…………え?


 ははっ。ええそうですね。そのことですよ。それはまた後で教えていただけたら。……はい! お任せください! では失礼します」


 通話終了の画面を確認した葵は、荷物の整理をして鍵を閉め、鍵は職員室へ。
 そして再び、生徒会室のある校舎に戻ってくる。葵の目の前には、立派な装飾の施された分厚い大きな扉。


「(きっとあの人はまだおられるだろう)」


 そう思って扉をノックする。中からはやっぱり彼の声が。
「失礼します」と一声掛け、重い扉を開けた。


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