すべてはあの花のために③

ここにいる誰か一人にでも幸せを分けてあげられたら


 13時――非常灯も消された会場では、幕が下ろされたステージ上の司会者にのみ、スポットライト当てられている。


『皆様、大変お待たせ致しました! これより桜ヶ丘高校ミス・ミスターコンテストの開催です!』


 そして一気に幕が上がると、そこには今大会の参加者がすでにデート服に着替えて並んでいた。


『今回の優勝したミスにはティアラを、ミスターにはペンダントを贈呈致します! 桜ヶ丘高校オリジナルで、世界にただ一つしかありません! 栄光の印は一体誰の手に渡るのか、この男女各15名の中から選ばれます!』


 たくさんのライトが旋回しながら、参加者全員を照らしていく。


『それでは早速センスの審査に移りましょう! エントリーNo.1の方はステージの真ん中へいらしてください!』


 司会の人がそう言うと、他の参加者はステージの左右に分かれて待機する。生徒会メンバーの登場する順番はこの通りだ。


◇ミス
 ・・・・・
   ↓
 エントリーNo.13 ツバサ
   ↓
 エントリーNo.14 キサ
   ↓
 エントリーNo.15 葵

◇ミスター
 ・・・・・
   ↓
 エントリーNo.12 アキラ
   ↓
 エントリーNo.13 カナデ
   ↓
 エントリーNo.14 ヒナタ
   ↓
 エントリーNo.15 知らない人


 センス審査は男女交互にステージへ上がるため、エントリーNo.の奇数と偶数で左右に分かれている。参加者だけでなく審査員にも一般人が紛れているため、参加者の写真の入ったパンフレットが、体育館前には準備されている。中には人数合わせで無理矢理入れられた感が漂っている可哀想な人も。


「(見た目はもちろんだけど、差をつけるためにはわたし的にギャップが必要だと思うんだよね)」


 普段のその人から想像できないような。
 人って単純だから、そんなものを見せられるとつい見比べてしまうのだ。


「(……何が起こるかわからないし、用心しておかないと)」


 あの男、最初は優勝を条件にした。気を抜いてはダメだ。
 そんなことを思いながら、葵はステージの左側に待機して自分の出番を待っていた。


「(にしてもさ、何なのさこれは……)」


 葵の周りを、生徒会の三人が何故か取り囲んでいる。


「(しかも私服ってあんまり見ないから……ちょっと目のやり場に困るんですけど)」

「葵」


 目が泳ぎまくっている葵に、アキラが話しかけてくる。一体何を言われるのかと思えば。


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