すべてはあの花のために④
sideトーマ
「なあお前ら。なんでいいところで邪魔してくれるわけ。泊めてやってんだからちょっとは気を利かせろよ」
来ていることがバレてしまわないよう、早くに着いたみんなは離れ家にまとめて泊めてもらえるよう両親に掛け合ったらしい。
「杜真、アンタって男は本当に最低ね」
「そうだよ。アオイちゃん離れてって言ってたのに」
「とーまクンがあんなことしてたから」
「オレらアキとカナ抑えるので必死だったんだぞ……?!」
「(こくこく!)」
「まあ結局のところ、アキくんが飴投げて邪魔しちゃったけど」
「ほんと。あっちゃんに当たってたらどうする気だったのよ」
「葵には当てない自信があったんだもんっ」
時間短縮できた要因は【四国ぶらり旅チケット】だけでなく、理事長の伝を使いまくったおかげだそうだが。
「葵ちゃん道場使ってるんだからな。静かにしてないとバレるぞ」
母屋よりも離れの方が道場に近いこともあるが、それ以前に頭のいい彼女だ。彼らの浅知恵なんて、あっという間にバレてしまいそうだけれど。
「それにしてもお前ら、今まで何して――」
『キー! キキキーッ!』
「え」
聞き覚えのある『音』に、トーマはそこでようやく大画面のテレビをやっと見た。
『た、大変だ! 一人連れて行かれてしまったぞ! さあどうするヒーラー・シャイン!』
『……っ、このままにしておけないっ! みんな、おらに元気を分けてくれっ! 天に! 手の平を天に向けて伸ばすんだっ!』
「出た! あっちゃんが杜真を連れ去るシーン!」
それは、偽の結婚式DVDだった。
「(ほんっと最悪なんだけど)」
話を聞くに、母から「ぜひ見てくれ!」と鑑賞させられていたらしい。
「オレはもうあんなコスプレなんて……っ」
「ちかクンも格好よかったよ!」
「(こくこく♪)」
「そうね。小っちゃかったけど(ぷっ)」
「そうだね。スモールサイズだけど(ぶっ)」
「喜ぼうと思ったら、やっぱりこうなるわけねー……⁉︎」
いじられているチカゼのおかげで気を取り直したトーマは、壊れたプライドは投げておくことにした。