すべてはあの花のために④

致し方ありません


「トーマさんすみません。荷物重たくないですか?」

「全然大丈夫だよ。それよりも葵ちゃん、なんか垢抜けた?」


 トーマは葵の顔を覗き込む。


「それは多分、滝行とお風呂を一日に何度も行ったので、そのせいじゃないかと!」

「いや、垢抜けるってそういう意味じゃないから……」


 トーマの顔が若干引き攣っている気がしなくもないが、まあ気にしないでおいた。


「それはそうとトーマさんっ! 今日はどちらに行くんですか?」

「うーん。葵ちゃんはどこに行きたいとかある?」


「行きたいとこがあるならそっち優先にするよ」と尋ねられたが、遊ぶつもりがなかったのでわかりませんと素直に返す。


「じゃあ、俺のお勧めに連れて行ってもいい?」

「はい是非!」


 お日様のように微笑む葵に、トーマは自分も負けじと白い歯を見せながら笑う。


「では今日は、俺のデートプランであおいちゃんを虜にしちゃいましょう」

「それはありませんが、楽しいところを希望します」


 葵の返しがわかっていたのか、トーマは楽しそうに笑っていた。


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