すべてはあの花のために④
わあ~ん。味方がいないー
それから一度スーパーに寄った後、自宅のマンションに到着したのだが。
「……あいつら、何やってんだ」
「み、見なかったことにしてあげましょう」
葵たちが見たものとは……。
「168番カナデ! 歌いま~す!」
そうして歌い出したのはガキ大将の歌だったけれど、普通に上手く歌い上げる彼に合いの手を入れるように、
アキラはパインアメで笛を吹いていた▼
ツバサとチカゼは指笛と口笛を吹いて応戦▼
アカネに至っては、散々みんなに荒らされたのか、さっき折角セットした髪の毛がぐちゃぐちゃになっているが、「よいしょっ」「ほらさっ」と合の手を▼
キサは、どこにそんなものがあったのか、カスタネットを使ってリズムを刻み……▼
ヒナタに至っては、その様子を動画に撮っているだけで……あ。一応手拍子してるが、殆ど何もしていなかった▼
どこかの音楽隊っぽくなってはいるが、誰もチップは投げないだろう。
君らのマニアぐらいだよ、きっと。というか168回するくらいなら、違う方法考えようよ。
「ヒエンさん、このままスルーして地下の駐車場へ行きましょう。そこから上がれますよね? わたし、彼らの知り合いだってバレたくありません」
「そうだな。俺も今そう思っていたところだ」
そうしてヒエンは車を動かし、駐車場まで急いで走らせた。何とか彼らにバレることなく駐車できた葵たちは、「はあー……」と大きく息を吐いて車から降りた。
「やばかったですね、ヒエンさん」
「ああ。折角ここに落ち着いたのに、俺はまた違う理由で引っ越さないといけないのかと思ったぞ」
そうしてバタンと扉を閉めて、さあ行こうとしたところで。
「遅いっ!」
「見てたなら止めてよ!!」
結局のところ彼らに見つかっていたみたいで、駐車場まで追いかけられたのだった。