すべてはあの花のために④
sideトーマ
「にしてもトーマさん。デートプランっていうのにはもう突っ込みませんけど、まだ時間は残ってますよ?」
「何? そんなに俺と離れがたい?」
まだ腰に手を添えていた手は、存分に抓られた。
「痛て。……まあ、俺は十分楽しめたし。よかったらあいつらにも、楽しむ時間あげてよ。葵ちゃん」
茂みを指差しながら言うと、隠れていたみんなは大慌て。「ちょ! バレてるじゃねえか!」と叫び声をあげるチカゼに、全員から突っ込まれたハリセンの音まで。
「でも、わたしは今日、トーマさんと……」
「あいつら、心配でここまで来てくれたんだよ。……ま、俺が嬉しすぎて、何も考えないままちょっと自慢しようと日向に葵ちゃんとのツーショット写真送っちゃったのが、そもそもの原因なんだけど」
「え」
「でもね?」
ゆっくりと立ち上がると、彼女は不安そうにこちらを見上げた。
「あいつらは、俺が送った写真を見る前に葵ちゃんがこっちに来てるってわかってたみたいだよ」
「え?」
「それだけ葵ちゃんのことを大事に思ってる。……ちゃんと葵ちゃんのことを考えているから、ここまで来ても葵ちゃんの邪魔はしなかった。もちろん、俺は存分に邪魔されたけど」
「……ふふっ」
「だから、葵ちゃんも大事にしてやってよ。俺の大事な友達のこと」
「はいっ。もちろんですよ!」
葵も立ち上がり、にっこり笑った。
「でもトーマさんも、ちゃんと送ってくださいね。大阪まで来てくれるんでしょう?」
「……ははっ。うん。もちろん」