すべてはあの花のために④
じゅるじゅる
帰りの新幹線。葵は、みんなにいつから気づいていたのか尋ねられておりました。
「あー。……実はねえ、わたし道場で稽古してたじゃない? それで……その。朝方お風呂を戴こうと思ってたんだけど……」
あまりにも勿体振る葵に、飛び交うはっきり言ってよという声。
「あー……。えっとねー……」
それでもどうしたもんかと目を泳がせていると、すぐ近くから大きな大きなため息が落ちた。
「オレに会ってたりするんだよねーこれが」
まさかのびっくり。ヒナタがそんな暴露をするとは思っていなかったみんなは、新幹線にもかかわらず「何やってんだ!」と声を荒げた。
「え。だってしょうがないじゃん。トイレ行きたかったんだから」
「そうだぞ! 生理現象には逆らえない!」
「だよねー」
「うむ!」
葵の目が泳いでいたのは、単純にご主人であるヒナタに、会ったことを口止めされていたせいである。
「……アンタたちそんなに仲良かったっけ」
「別に普通」
「そう。普通」
「なになに~? ほんとは何したのよー」
そうやってキサがヒナタを肘で突いているが、ヒナタと葵は二人目を合わせて首を傾げた。
「え。ほんとに特に何もなかったんだけど……え? なんかあったっけ?」
「え? いや、『あ。おはよ?』ぐらいしか話してないけど……」
「そうそう。まあなんでこっちに来たのかは言ったけど」
「わたしの邪魔するつもりはないって言ってたから、それならと思ってヒナタくんにはみんなに黙ってもらってただけだよね?」
「そうそう」「それぐらいだよ?」と、二人で答えても。
「(なんかさー?)」
「(そうよねえ……)」
「(なんであいつらってさ)」
「(なんだかんだで)」
「(犬猿の仲っぽいのにさあ……?)」
「(結構似てたりするよね~)」
「(こくこく)」
しばらくの間、何か言いたげな顔でじっと見られたけれど。