すべてはあの花のために④

企業秘密でーす


「ねえ。翼くんと何イチャついてたの」

「え? 別にイチャついてないよ?」


 帰宅中の車の中。シントに先程の尋問を受けていた。


「は? とぼけてんの? こっちはばっちり抱き合ってるの見たんだけど」

「あの雰囲気をイチャついていると思うシントには、やっぱりまだまだ躾が足りないようですな」


 葵がポキポキと指を鳴らしたところでようやく、シントは冗談を諦めた。


「翼くん、なんて?」

「まだ話せないって」

「はあ。話したら楽になるのに」

「あなたそれ、人のこと言える?」

「馬鹿。人のことだから言えるに決まってるだろ」

「……でも、あの二人に関してはギリギリまで待つつもりだよ」

「は? 何、ギリギリって」

「それまでに言ってくれなかったら……わたしが限界だったら、容赦なく踏み込ませてもらうけどね」


「それまでは、待つことにしてるから」と言う葵に、シントは怪訝そうに顔を歪ませた。


「何。日向くんに言われたのと、なんか関係があるわけ」

「ないことはないけど。……すごい拒否だったから、若干わたしがビビってるのもあるね」

「へえ。珍しいね。葵がそうなるなんて」

「いや、シント知らないでしょ。ヒナタくんの怖さを」


 がくがくとわざと震える葵を見て、「いや、俺もこの間十分身を以て知ったから……」と答えるシントに、思わず首を傾げた。


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