すべてはあの花のために④

一種の心霊現象


 4時になると、シントが設定してくれた目覚まし時計が、ぴぴぴと鳴った。
 目覚ましを止めた葵は、ゆっくりと体を起こす。


「はい。おはよう葵。お風呂入る?」

「…………」


 ぼうっとしているのか、葵の瞳はぼやけている。


「……あ。おはよう。シント」


 やっとシントの存在に気がついたのか、葵はシントに笑顔で返事を返した。


「どうする? お風呂入るでしょ?」

「うーん。本当は今すぐにでも出て行きたいけど……」


「さっと行ってくるよ」と、葵はシントに着替えをもらって部屋を飛び出す。


「はあ。……葵。一体何したんだよ」


 シントは、部屋を……寝室を見て、大きくため息をついた。


「ほんと、暴れすぎだから」


 いろんなところへものが飛んでいて、何が無事かどうかもわからない。
 けれど、引き出しとクローゼットの鍵が掛かっているのに気付いて、ふっと苦笑をもらした。


「さて。千風くんはどこにいるんだろうね」


 そう言うシントこそ寝てないので、実は内心運転するのにビクビクしていたのだけれど。


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