すべてはあの花のために④

sideオウリ


 しばらくして体を起こした二人。

 葵はオウリの涙を見て、笑いながら拭ってあげた。続けて今度は、頭をぐるぐるとかき混ぜるように撫でた。
 オウリはというと、葵の突飛な行動に目をパチパチ。というのも、葵の顔がなんだかすっごく嬉しそうだったから。

 しばらくそうして、葵はこつんとおでこを合わせた。


「えへへ~」

「?」


 どうしてこんなに喜んでくれるのかわからなかったが、葵が嬉しそうな顔をしていたので、お売りもなんだか嬉しくなる。


「オウリくん。今日はね、みんなで晩ご飯を食べるんだよ~」

「……?」


『そうなんだ。それは賑やかになりそうだね』と、笑顔で相槌を打つ。


「今日の晩ご飯はね~、ヒエンさんの希望でバナナになったんだよ~?」

「――!?」


『晩ご飯にまで食べるなんて……どれだけバナナが好きなの』と、今度は項垂れる。
 その様子から、まさかの晩ご飯以外ではバナナをよく食べることを知ってしまったが。それはさておき。



「今日はみんなで今から手巻き寿司をつくりまあーす!」


 葵は、すごく楽しそうに立ち上がって、両手を広げてくるくる~っと回って。


「オウリくんのリスみたいに食べる姿を拝むためにっ!」


 握り拳を作って高々に言うもんだから、オウリは何だがおかしくなって笑った。


 それでも出ない声が、今はただ……悔しかった。


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