すべてはあの花のために④

sideチカゼ


「あー。……マジ、何やってんだよオレ」


 病室になんか、入れなかった。


「わかってんだよんなこと。……いつかは、こうなるって」


 病室にも入れず、姿だって見られなくて。


「……ぜってえ、心配してんだろうな」


 急に飛び出したんだ。
 みんなきっと、自分のことを心配している。


「……っ。く、そ……」


 弱い自分に嫌気が差す。


「話さなきゃ、いけねえんだ。ちゃんと」


 見捨てないでいてくれるって。
 見ていてくれるって。

 ……約束してくれたから。



 チカゼは、立てた膝の中に頭を埋め、両耳を腕で塞ぐ。


「ちゃんと、誓っただろ。あいつも。言ってくれ……っ」


 その時、視界に誰かの靴が入ってきて、やわらかい何かがふわりと掛けられた。


「チカくんが、誓いを成し遂げるまで。わたしはちゃんと『見てる』よっ」


 顔を上げるとそこには、ふわりと笑いかけてくれる彼女の姿。


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