すべてはあの花のために④

いいんかい


「おーい。大丈夫っすか」

「……!?」


 すっかりへたり込んで動けない葵の元へ、チカゼ帰還。


「んだよ。もう一回すんぞ」

「ちっ、チカくんはなんで慌ててないの?!」

「……照れてんの?」

「い、今は違う話!」


 ようやく復活した葵は立ち上がるが、病院に祖母が運び込まれたというのに、彼は平気そうな様子で葵の頭を楽しげにぽんと叩くだけ。


「悪い悪い。ついからかいたくなるんだよなー。なんでだ?」

「いつもからかわれてるのに、そんなことも知らないのか」

「なんだよ。お前わかんの?」

「みんながチカくんをいじってるのは、チカくんの反応が可愛くて面白くて、ついからかいたくなっちゃうんだと思うよ?」

「……オレ、可愛いって言われんのそんなに嬉しくねえんだけど」

「何言ってるんだ。チカくんは可愛い分類だ!」


 自信を持って言い切ると、チカゼはがくっと肩を落としていた。


「ま、相手がお前なら話は別か」

「へ?」


 それでもやっぱり、わしゃわしゃと葵の頭を撫で回すだけ。


「……ねえ。どうしてそんなに落ち着いてるの? さっきまでビービー泣いてたのに」

「は? な、泣いてねえ」

「いや、だから無理あるって」

「あー……まあ大丈夫だ。ピンピンしてるよ」

「え? なんでわかるの。おばあさまの姿を見るのさえつらくて、病室にも入れなかったんでしょう?」

「そうだったんだけど、マジで大丈夫なんだよ。連絡来たから」


「へ? 連絡?」と疑問符を浮かべる葵の前に、チカゼがスマホの画面を見せてくれた。画面には、きっと彼の祖母がベッドの上に座り、彼お得意の同じスマイルでピースをしている。


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