すべてはあの花のために④

はじめましてですよ


「何してんのよあんたは! みんなに心配掛けて! どれだけ心配したかわかってんのかゴラー!」

「す、すんませーん……」

「わかってるのチカちゃん! どれだけいろんな人に迷惑掛けたのか! 大きくなったかと思ったのに! まだ肝っ玉ちっさいままなんかゴラアー!」

「ご、ごめんなさい……」


 キサだけではなく、キサ母のアカリにまで存分に叱られていたチカゼ。そんな彼の姿を、キサ父のサツキ、キク、そしてカエデは安心した顔をしていた。
 ちなみにシントは、葵たちを送ったら「もう大丈夫でしょ」と言ってさっさと帰えりました。寝るそうです。


「チカゼ。なんねえ、そのだらしない顔は」

「おー。わりぃわりぃ。ばばあの顔見たら嫌でもこんな顔になっちまうんだよ」


 ベッド横に座るチカゼの顔は、本当に嬉しそうに緩んでいた。


「あんたあれやろ。どうせばあちゃん死ぬんやないか思うたんやろが」

「は、はあ!? ばばあがそんなに早くぽっくり逝くわけねえだろうがよ! べ、別に? そんな心配してねえし? 逝くならさっさと――んん?!」


 照れくさくてもそれはダメだよと、葵はチカゼの口を塞ぐ。


「おばあさまはじめまして。お元気そうなお姿を拝見できて、とっても嬉しいです」

「あれまあ。これはご丁寧にどうも」


 そう返すおばあさまに、葵はにっこりと笑う。


「チカゼくん、さっきまでビービー泣いてたんですよ」

「……?! んん……?!」

「そうやろそうやろ。そうや思うたんや」


「ははは」と笑い出したチカゼの祖母につられて、みんなも笑い出す。


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