すべてはあの花のために④
三十一章 漸進

学校には行ってください


 あのあと葵は、少し寄り道をしながら学校へと向かっていた。


「(ツンデレ猫さんが、甘々から一気に攻め攻めになってしまった……)」


 先が思いやられた葵は、内心で頭を抱える。


「(やっぱり、チカくんにはバレてたか)」


 それは、葵がただ彼を助けるために、力を振るっていた時のこと。


「(……みんなのことは、これ以上巻き込みたくない)」


 こんな、残酷な運命に。
 大好きな彼らを、巻き込みたくなんてなかったのに。


「(……でも、まだそうとは限らない。わたしは、今のわたしができ得ることをやっていこう)」


 まだ朝が早く、登校するには早い時間。
 朝日を見上げた葵は、ふと思い立つ。


「(あそこに、行ってみようかな)」


 寺の山奥にあった、町全体が見渡せるような場所で、葵がオウリを助けたあと、キーンと駆けて行った場所。


「(あそこは、……あの子(、、、)と出会った場所だから)」


 そういえばあれ以来行っていなかったと、葵は登校ギリギリになりそうなのを覚悟で寄ってみることにした。


< 213 / 267 >

この作品をシェア

pagetop