すべてはあの花のために④
sideオウリ
16年前の冬に、おれは生まれました。
父は大樹。母は花梨。
お父さんもお母さんもとってもやさしくって、いつも幸せで、笑顔が絶えない家庭でした。
おれが生まれてからは、何かある度に、たくさんの写真を両親は残してくれました。
お父さんはほんのちょっぴり臆病な人で、お母さんにいっつも活を入れてもらっていたのを覚えています。
おれが3歳になって、来年からは幼稚園だねと話していた頃。年が明けてすぐに、おれの家に警察の人たちが押し寄せてきました。
何が起こったのかもわからないままお父さんは取り押さえられ、お母さんが必死に警察の人に泣きながら何かの間違いだと訴えました。
おれは何もできませんでした。何が起こってるのかもわからないままただ、暴力的な警察の人を見て、泣き叫んでいました。
それからお父さんは、警察の人に連れて行かれました。
家の外には野次馬たちがうじゃうじゃいました。
お母さんは、お父さんを助けてあげられなかったのを悔いていたのか、おれにしがみついてずっと泣いていました。
それからは、来る日も来る日もお母さんは警察の人と話をしていました。
事情聴取に誰が来ても、いつも同じように「何かの間違いだ」「ちゃんと調べてくれ」そう言っていました。
でも、おれと二人っきりになったお母さんの顔には、いつも笑顔が絶えませんでした。おれも一生懸命笑ってました。
お母さんは、いつも同じような話を、来る人にしていました。
そんなことがずっと続いていたので、おれはおじさんのところに預けられました。
「絶対迎えに来るからね? それまでいい子にして待ってるのよ?」
お母さんが笑顔で言ってきたので、おれも笑顔で返しました。
それからおれは、お母さんの迎えをずっと待っていました。
まだかな? まだかな? って。来てくれた時にはお父さんもいるのかなとか、笑顔なのかなとか、そんなことを思いながら。おれは、ずっと待ち続けました。
おじさんにも、よくしてもらいました。
本当のお父さんみたいに接してくれて、おれは家族がまた増えたように感じていました。