すべてはあの花のために④
みんなが持ってるんだね
手紙は、そこで終わっていた。
そして、たった今書いたわけじゃないんだと――彼が、前から強くなろうとしていたことを知って、葵は涙が止まらない。
オウリは、ゆっくりと後ろへ回って抱き締めてくる。彼の体はもう震えてはいなかったけれど、一瞬見えた耳は少しだけ赤くなっていた気がした。
顔を見せまいとしているのか、肩に額を乗せたまま、彼はむぎゅっと葵のことを抱き締める。
ここまで話すことはとても勇気がいっただろうから、充電中なのか。
それとも、葵が離れていってしまうかもしれないと不安に思ったのだろうか。
そんなことは絶対にないから大丈夫だよ――そっと、自分の手をお腹に回っている彼の腕に触れる。彼の体がぴくっと震えた。
「……〜〜?」
しばらくして、意を決したように彼は少し腕の力を緩めて、後ろから葵を覗いてくる。少し照れくさそうに笑った彼に、涙の跡を拭いながら微笑み返す。すると心底嬉しそうに笑った彼は、もう一通の便箋を取り出した。
【あーちゃんへ】
手紙の宛名を確認して彼を見上げると、『読んで読んで?』と、笑顔が促してくる。
それに笑顔で頷いて、葵はゆっくりと手紙を開いた。