すべてはあの花のために④

今日の晩ご飯は、お父さんの大好きな


「(あーあ。理事長に言うつもりなんてなかったのに)」


 葵は待ち合わせの裏門まで走っていた。急いで行くと、そこにはすでに軽トラが止まっている。


「すっ、すみません! うちの子ども理事がもたもたしてたもので……」


 頭を下げずに謝ると、その人の手が窓から伸びてきて、労うように頭をぽんと叩かれる。
 その後助手席に乗るように言われ、さっそく乗らせてもらうことにした。


「では、早速お話してもよろしいですか、ヒエンさん」


 彼はちらりとこちらを見ただけ。だからすかさず葵は頭を下げた。


「すみません。前巻も最後ほったらかしにしちゃったから、怒ってるんですね……」

「別に、あの後お嬢ちゃんに守っとけって言われた奴らか『もういいからさっさと帰ってください』て言われたことなんて気にしてない」

「よ、よく言っておきます。ちなみに、その後ってどうされて……?」

「あ? 四人で飲んだけど。なんか文句あるか」

「いいえすみません大変ありがとうございました」


 あなた方のアフターフォローができてなくてすみませんと、一つ謝っておくことにして。


「でも彼らと意気投合したみたいでよかったです」

「え。まだこの話引き摺る?」


 ごめんなさい。感想がどうしても言いたかったんです。


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