すべてはあの花のために④

ビックリしたよ~


 それから7時頃迎えに来てもらえるようにお願いし、葵はシントとの通話を終えた。
 するとオウリが、首を傾げるようにこちらを覗き込んでくる。


「あ。そうなのだよオウリくん。わたし家の用事があるから、朝は迎えに来てもらうことになったの。だから、今日は学校休んじゃうんだけど、またお母様に会いに行く時は教えてくれる?」

「(こくこく)」


 ああこれでよかったと、まずは一括り。
「そういえば」と、ずっと聞きたいことを思い切って尋ねてみることにした。


「あんなにたくさんのお手紙、いつ書いたの?」


 近くにあったベンチへ二人で腰掛ける。すると窺うように葵のスマホにつんと触れる彼へ、文字が打てるよう画面を準備すると、さささーっと彼は打ち始めた。その度に、左手首に着けているブレスレットが揺れていた。


 しばらくして彼が教えてくれたその内容に、葵は驚いて声が出ない。



┌                     ┐
 文化祭の日にあーちゃんから言ってもらえて
 本当にちょっとずつしか書けなかったんだ。
 やっぱりどうしても苦しくなっちゃって。

 でも、病院でお母さんたちに会って
 あーちゃんと別れてからずっと
 強くならなきゃと思って書いてた。


 みんなには申し訳なかったよ。
 面白いことしてくれてたみたいなんだけど、
 書けるまで待っててもらってた。

 それで『よし! 書けた!』と思ったら
 もうみんないなくなってて。
 追いかけようとしたら、
 あーちゃんに飛びつかれてもうびっくり!

 でもあーちゃんのおかげで
 みんなとも気まずくなくなった!

 さっきあーちゃんに待っててもらってたのは
 最後の手紙だけ、書いてたんだ。


 あーちゃんに伝えることができて
 本当によかった!
└                     ┘



(わたし、今日はずっと怯えてたものだとばかり)


 彼の顔は、本当嬉しそうだった。


「……うんっ。たくさん伝わったよ! オウリくんが強くなってて、わたしもビックリしたよ~」

「♪~♪」


 よかったと思って下に顔を向けると、ブレスレットがちらりと目に入る。


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