すべてはあの花のために④

sideヒエン


「……はあ。大丈夫かよ、あいつら……」


 あのあと、結局のところお昼前までいた彼らの背中を、今日も仕事を休んだヒエンは見送っていた。どうやら、一旦帰って午後の授業には出ることにしたらしいが。


「……よっこいせ」


 オウリはもうアカネのところに行っていて、そのまま一緒に登校するらしい。


「ったく。なんでこんなもん。俺が恥ずかしいじゃねえか」


 ヒエンはベランダのベンチ裏、手摺りの端に設置していたものを取り外す。


「……悪いな、お嬢ちゃん」


 その小さな装置を、ある住所が書かれた封筒へ。


「さてと。病院行くかあー」


 そしてヒエンは、ポストにそれを投函する。



「俺も、駒の一つか」


 軽トラに乗り込み車を動かす彼の目は、駒だとしても何故か清々しく光っている。


「今日オウが帰ってきたら、話すっかな」


 彼の行き先は、希望で明るく照らされていた。


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