すべてはあの花のために④

side……


 翌日。桜ヶ丘高校。生徒会室にて。


「はあああああああああああ」

「いや、怖いからアキ……」

「こっちまで沈んじゃうじゃない」

「しっかりしなさいよ秋蘭!」

「あきクン、飴舐める……?」

「ぐすん。舐める……」

「あ。そう……」


 連日学校を休んだ葵に「俺があの時……」と、アキラはずっと自分を責めていた。


「……にしても、あれから何にも連絡がないなんて」

「あたし、あっちゃんに電話してみたけど、『電波がないとこにいるか、電源が入ってないか、修行中だから出られない』って言われたよ」

「――修行?!」


 一風変わった留守電サービスだなあと、首を傾げる面々。


「……もしかしたら、まだ家の用事が終わってないのかもしれないわ」


 寧ろ終わっているというか。
 ……端からしていないというか。


「心配だね、あおいチャン……」


 今はどちらかというと、シントの方が大変というか……。


「あおいぃいい〜……」


 二年生組は、葵が来ないし連絡が付かないしで、落ち込んでいるアキラを絶賛朝イチから慰め中。


「アキ。まだ落ち込んでるのかよ」

「……?」

「しかもまたアキくんアメ舐めてるし」


 そうしているうちに、一限目を終えた一年生組も合流した。


「――じゅぽっ!」


 すると、飴を取ったアキラが「メールが来た」と呟く。


「メール? あっちゃんかな?」

「いや違う。葵なら、葵の声を通知に設定してるから」


 それにどん引きされているとは露知らず。スマホを確認したアキラは「知らないアドレスからだ」と、続けて「……うわ。リアルにストーカーになってるし」と若干引き気味なご様子。


「(シン兄。なんでアドレスまで知ってるんだ……)」


 実はこの間教えたのは番号だけだったのですが。
 しかしメールには、急ぎ電話で折り返して欲しいとのことが書かれていた。


「シン兄が電話くれって」

「え? ……あっちゃんに、何かあったのかも」


 視線を交わし合ったみんなは大きく頷き合う。そしてスピーカーにしたアキラは、シントに電話を掛けた。


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