すべてはあの花のために⑤
告白されたことってある?
エントランスまで帰ってきたツバサと葵は、こっぴどくみんなに叱られてしまった。なんでも、何度も連絡していたらしい。気がつかなかった二人は、説教が終わる頃にはとても小さくなっていた。
今日の夕食はホテル近くの店で食べようということに。新鮮な海鮮料理や伝統料理を食べることにしたのだが、初めて聞く料理名だったり、どんな食材を使っているのかを店員とたくさん話す度に仲良くなってしまった。食べたことがないものに関しては、前回のことがあったのでちょっと緊張したが好奇心が勝った。でも、どの料理もすごく美味しかった。
明日は旅行最終日。
朝早く出発するので、今日は夜更かしせず寝ることになった。
時刻は23時。
「よし! やること終了! お風呂も入った! 準備万端!」
そう思っていると、スマホに連絡が。
「はーい! 今行きまーす!」
髪を乾かすのは間に合わなかったので、首にタオルを掛けてお出迎え。
「いらっしゃいツバサくん。ごめんね? 明日早いのに無理言って」
「いいから。入るならっさっさと入れて。なんか嫌な予感がするから」
「え? 嫌な予感?」
「いいから……っ!」
何故か慌てた様子のツバサは、葵を部屋に押し込み、急いで二重に鍵を閉める。
「ど、どうしたんだ、ツバサくん! 誰かに追われてるのか!」
「あながち間違っちゃいないわ」
ツバサが葵の肩に手を置いて奥へ進もうとしたところで。
ドンドンドンドンッ!
「「――!?!?」」
一種の怪奇現象かと思うほど、いきなりドアを叩かれた。
「やっべ。ギリギリかよ」
直後、外からみんなの声が聞こえてくる。
「な、何が起こったんだ?」
「……多分、アタシがドア開けたから、どうしたのかと思って他の2年生組が来たのよ」
「み、みんな耳いいね。しかも確かツバサくんって、みんなの一番端じゃなかった?」
「アタシの隣、アキだから……」
「おう……」
多分、お菓子センサーならぬ葵センサーが反応したのだろうと、二人で納得しておいた。