すべてはあの花のために⑤
三十六章 修学旅行 最終日
ば、ばっきゃろーッ!
「(……えーっと。わたし、昨日何したっけ?)」
時刻は朝5時前。葵が目を覚ますと、オカマさんの胸板が目の前にありました。
「(つ、ツバサくんに、お礼の代わりになるものがしたいって言われたから、言えてなかった話をしたまでは覚えてるんだけど……)」
「うーん」と悩んでいると、「んだよ、起きたのか」と、頭上から声が。
「おはよう葵。よくお眠りで」
「えっと。お、おはようツバサくん」
「お前、話の途中で急に寝落ちたからマジでびびった」
「えっ。嘘?!」
「あまりにも急に落ちたから、なんかあったのかと思って焦ったし」
「も、申し訳ない……」
「心配だったのもあるけど、すぐ帰るのがちょっと怖かったから、少し時間が経ったら帰る予定だったんだけど……」
「だ、だけど?」
「あまりにもお前が気持ちよさそうに寝てたから、一緒に寝ちゃった。温かかっただろ?」
「ば、ばっきゃろーッ!」
メリメリと、ツバサの顔面に葵の拳がめり込んだ。
「ありがとうツバサくん! おかげであったかかった!」
「い、いや。言葉と行動が伴ってな……ガク」
「わー! ツバサくん! しっかりするんだ!」
「人が折角心配してやったのによう。なんで朝からグーパンチ食らわないといけねえんだよ。しかも顔面」
「だ、だから悪かったって」
「しょうがないから、もうちょっとこのままだなー」
「ええ?!」
「だって俺あんまり寝てねえんだもん。もうちょっとしたら起こして」
ま、まあ。確かに少し早すぎるけれども。
「もう自分のお布団に帰ったらいいんじゃないかな……?」
「今日はここが俺の布団」
「わあー! どっ、どこ触ってるの!」
「え? …………尻?」
「サイッテー! ほんとサイテー!」
「へえへえ。どうせ俺は最低野郎だよー」
そう言ってもツバサはここから出るつもりもなく、葵を放すつもりもないみたいで。
「……ふう。だったらギリギリまで寝てて?」
「……っ。お前もが、いい」
「わかったわかった。……心配掛けてごめんね? もう急に寝たりなんかしないからね?」
「んっ」