すべてはあの花のために⑤
ど、どうしてそんなに素っ気ない?
船長に次にどこへ行くのかと尋ねられ、『星の砂で有名なところへ』と言うと、普段なら飛行機で来た島まで行くのだけど、乗っていたのが葵たちだけだったので今回は特別に直接そこへ乗せて行ってくれた。
何でも理事長の知り合いみたいで、桜の生徒だというと快く了承してくれたのだ。理事長の顔の広さを実感した。
その時の船では、オウリが葵にたくさん話しかけてくれて気分が悪くなることはなかった。
「帰りの飛行機が21時発だから、20時までには着いておこう」
「だったら、16時から17時の間には飛行機に乗って那覇まで帰らないといけないねー」
「ダイビングは、そんなにできないかもしれないけど、まあ一時間ぐらいかしら?」
「そんぐらいじゃね?」
「でも、結構ギリギリの時間だね~。お土産とか、最後買えないかもしれないよお……」
そう言うアカネに、葵が土壇場ではあるけど提案してみる。
「だったら二手に分かれる? ダイビング組と観光組! そしたらお土産も買えるよ? ダイビングの人の分まで買っておいてあげたらいいし」
「じゃあ取り敢えず、あーちゃんの意見を参考に、観光だけで十分って人は?」
オウリがそう聞くと、葵とオウリと九条兄弟が手を上げた。
残りの五人を「楽しんできてね~!」と見送り、葵たちは真っ白な砂浜を少し歩くことに。
強い日差しの中、葵は砂の中から星砂と、太陽の砂を見つける。
「あ! 見て見てオウリくん。可愛いねー! 星砂はちょっと先っちょが尖ってるけど、太陽の砂はまあるくて!」
「そうだね~! あーちゃんの方が可愛いけどっ」
「え。アンタたちまたその下りするわけ?」
「あっつ。早く日陰入ろうよ。熱中症になるよ」
スタスタと、ヒナタは日陰目指して進んでいく。確かにヒナタの言う通り、11月にも関わらず気温が高く、日なたに出てるだけで汗をかいてしまいそうだ。
「そんな素っ気なくしなくてもいいのに。ねえオウリくん?」
「え? あ。うん。そうだよね~」
「まあ可愛いのはわかるけど、取り敢えずお土産買いに行きましょ。時間ができたら、またこっちまでみんなのこと迎えに来てあげたらいいんじゃない?」
ツバサの意見には賛成したので、葵は立ち上がって今は遠くなってしまったヒナタの背中を、みんなで追いかけた。