すべてはあの花のために⑤

必殺技を編み出したのがバレた


 時刻は23時過ぎ。無事に空港へと到着した葵たち。まだ寝たりないのかみんなくたくただったけれど、ここからは電車に乗り変えて最寄り駅まで帰る。一応ここで解散になるので、生徒たちはすでにバラバラに散らばりだしていた。

 それでもやっと家に帰れると、葵はぐうーっと伸びをしていた。


「……お嬢様。お迎えに上がりました」

「あらシント。ご苦労様です」


 葵もみんなと電車に乗り換える予定だったのだが、どうやらシントが、空港まで迎えに来てくれたらしい。


「(……でも、おかしい)」


 迎えがいると連絡していたわけではないし、向こうから連絡があったわけでもない。それにどこか、彼から切羽詰まっているような空気が流れている。

 シントが来たことで、みんなはいつもの調子で群がろうとしたが、案の定シントは慌ててそれを制していた。


「シント、何があったのです」

「……急ぎ、お戻りくださいませ」


 執事モードが崩れないシントに、みんなも何かあったのかと怪訝な顔をしている。ついでに葵もお嬢様モードなので、若干みんなは気持ち悪がっていた。ちょびっと泣いた。

 まあそれはさておき、気を取り直した葵は事情を聞こうとしたけれど、その前にシントが葵の言葉を塞ぐ。


「……生徒会の皆様も、もう遅い時間です。お送りすることはできませんが、十分に気をつけてお帰りくださいませ」

「(……そういうことか)」


 どうしてシントがこんな態度を、表情をしているのかわかった葵は、みんなへと向き直る。


「それでは皆様、次の生徒会は月曜日でしたね。今日は執事が迎えに来てくれたようなので、ここで失礼致します。またもし変更等ありましたら、連絡していただけると助かります。……それでは、生徒会の皆様。とても有意義な旅行でしたわ。また、週明けにお目にかかりましょう」


 葵はシントに荷物を預け、みんなが何かを言ってしまう前にその場を退散した。
 葵は振り返らなかったが、シントは一度振り返り、みんなへ深々と頭を下げていた。



「……ねえ。あっちゃん、何かあったのかな」


 キサは不安そうに小さく呟く。みんなも、同じことを思ってはいても、その答えを知るはずもなく、ただただ怪訝な顔をしていた。

 取り敢えず月曜日に葵から話を聞こうという結論にはなったが、電車に乗って最寄り駅まで帰る道中、誰も口を開くことはなかった。


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