すべてはあの花のために⑤
ある花、人に貰われる

 こどものところへ、また、知らない人が遊びに来ました。
 そしてその人はこう言いました。


「だったら、僕のところへおいで」


 はじめは断りました。
 二人が大好きだし、何よりあなたを不幸にさせてしまうかもしれないからと。


「君が来てくれたら、僕は幸せになれるんだ」


 そうとは限らないのに、嬉しそうに笑いながら。


「僕のところなら、きっと知らないことがまだまだあるはずだよ。もしよかったら、僕のところで、咲かせられなかった君の花を咲かせてみないかい?」


 その人の話は難しくて、言ってることはわかりませんでした。
 でも、こんなに求められたのは初めてで、嬉しくて。

 こどもはこのままここにいたら、大好きな二人のことをもっと不幸にしてしまうかもしれないと思い、この人に付いていくことを選びました。



 そして、ある暖かな陽気になった頃。
 こどもは大好きな二人に別れを告げ、その人の元へと引き取られていきました。


< 132 / 263 >

この作品をシェア

pagetop