すべてはあの花のために⑤
うん?
「アオイちゃんってさ、もしかして水族館来るの初めてだったりするの?」
水族館の中のカフェでお茶をすることにした葵たち。
「カナデくん。流石に手放してくれないとケーキ食べられない」
「それじゃあ、あ~んってしてくれたら放してあげ――」
バシッバシッと、カナデはみんなにスリッパで叩かれた▼
「アンタそういえば、杜真と動物園行ってた時は、今よりもはしゃいでたわね」
「そうだね! あおいチャン、動物園も行ったことなかったの?」
子どものようにはしゃいでいたから、普段見る葵と違って見えたのだろう。
「うんっ。みんなといると、初めてのことがいっぱいで嬉しい! キサちゃんの言うとおりだ!」
「でしょでしょ? あたしたちといたら、いろんなとこ行くからねー。絶対あっちゃん飽きないと思うよー」
「ま、振り回されるけどね。主にキサとチカに」
「ヒナタ?! どーして君はいつもそんなことばっかり?!」
「事実だから、仕方ないよちーちゃん」
「オウリまで?!」
「ふふ。それでも、本当に楽しいよ? ……みんなと友達になれて、本当によかった」
すると、先程まで離れていたカナデの手が戻ってくる。少し慌てて様子で。
けれど彼も自分の行動に驚いているのか、目を見開いたあと「ごめん」とすぐに手を放した。
「どうしたの? お手洗い付いて行く?」
「いや、違うから。……なんか、今アオイちゃんが遠くに行っちゃいそうな感じがして。勝手に体が動いただけ」
一瞬目を見開いた葵は、すぐに「そんなことあるわけないじゃん」と笑っていた。
「なになに? とうとうあっちゃん、瞬間移動も習得したの?」
「ん? キサちゃん? 『も』ってどゆこと?」
そんな会話をしながらみんなで笑っていたけれど。
「…………」
アキラだけは一人、何故か思い詰めるような顔をしていた。
――――――…………
――――……
そのあと葵たちは、まだ見ていない場所を見て回った。
「カナデくん! 沖縄には大きい生き物がいっぱいいるんだね!」
「そうだねー」
「カナデくん! すっごい大きいヤドカリがいるっ!」
「わーほんとだねー」
「カナデくん! あっちには下から見られる水槽があるんだって! エイのお腹が見られるって!」
「おーすごいねー」
「カナデくん! クラゲ! クラゲがいる! 刺されたら大変だっ!」
「そうだねー。俺はあおいちゃんに刺したくてしょうがないけどねー」
「うん?」
「いやスルーしてくださいごめんなさい」
そのあとはすっごい大きなサメを見た。
「カナデくん! すっごい大きいね! 人なんてぺろっていっちゃうね!」
「俺はアオイちゃんならぺろっていっちゃえるよー」
「うん?」
「いやすみませんスルーでお願いします」